serial experiments lain 玲音の日記(Lda)

[ゲーム]


■■SiteA Level06
■Lda001
日記?
なに書こう。
私のことなんか、なにを書くの?
今日は朝起きて学校に行って授業を受けて、放課後に柊子先生のところに行ってお話して帰ってきて。
日記をつけることが私のためにいいって言われたから。
誰に言うわけでもないし、なにを書いたらいいのかもわからない。
とりあえず、ご飯を食べてテレビを見て、お父さんとお話して、それからお風呂に入って、今日記を書いている。
ああ、読みかえすと恥ずかしい。
なんか日記って苦手かもしれない。
やめたい。



■■SiteA Level07
■Lda002
今日はキョウコちゃんと買い物に行った。
イヤリングとブレスレットを買った。
だけどそれをつけて外出するなんてちょっとはずかしい。
キョウコちゃんはにあうからかっこいいけど、私はあんまりにあってないはず。
かわいくなければなにをしてもだめだ。
なんとなく損した気分。
でもおせじかもしれないけど、キョウコちゃんににあうって言われてちょっとうれしかった。



■Lda003
今日は図書館に行った。
柊子さんがちょっと話していた、精神分析とかカウンセリングとか、いろいろ難しい言葉を調べようかなと思ったけど、やっぱりよくわからなかった。
私って頭悪いのかなあ。
自分でもやっぱり自分がへんなことを言っている気がする。
キョウコちゃんたちに話したらきっとへんな顔をしちゃうと思う。
いやだ。
相談なんてできやしない。



■Lda004
柊子さんは心配なんてしなくていい、とか言うけど絶対私はおかしい。
あんなの夢なんかじゃない。
起きているときだって見えるんだから。
私は絶対おかしい。



■Lda005
くやしくて悲しくて学校に行きたくない。
悪口を言われてるなんて。
暗いなんて言われたって、私のせい?
くやしい。
涙がでてきた。
急に明るく笑えないよ。
キョウコちゃんがうらやましい。
こんなこと、またウジウジしてたら、みんなにもっと嫌われるんだよね。
私はだれも傷づけてないのに、なんで私がこんな目にあうんだろう。
トモくんも笑っていたのかなあ。



■Lda006
私は私でいいんだよね?



■■SiteA Level08
■Lda007
今日、保健体育の授業でちょっとエッチな話ではずかしかった。
キョウコちゃんとかニヤニヤして私に話しかけてくるし、男子たちははしゃいでいた。
トモくんも男子だからきっといっしょにさわいでいたと思うと、ちょっといやな気持ちになった。
たとえそうだとしても、今の私には信じられない。
いつか自然に理解できるようになる?



■Lda008
そうだ、柊子さんに聞いてみよう。
先生ならお医者さんだし、はずかしくないかなあ。
でも、変態みたいな目で見られたらどうしよう。
やっぱりやめとこう。



■Lda009
お父さんはこのごろ妙に帰りが早い。
学校のこととかいろいろ聞かれるから、ちょっとお父さんが嫌いになった
お母さんはこのごろ、あんまり文句を言わなくなった気がする。
私がへんになったから、気を使ってくれてるのかなあ。
なんかみじめ。



■Lda010
このところ、なんにも見えなくなった。
ひょっとしたら、私直ったの?
そうならすごくうれしい。
お父さんもお母さんも柊子さんも、よろこんでくれるかなあ。



■Lda011
もう日記なんてつけたくない。
今日起こったことなんて、特別なことなんて、あれだけだし。
もう見たくない。
なんであんな自分が思い浮かぶんだろう。



■Lda012
もう何ヶ月もたつけど、きっとまたって思っても、ちっとも慣れない。
こんな夢を見なくなりたい。
普通になりたい。



■Lda013
今日、お父さんがコンピュータを買ってきてくれた。
学校を休むときはこれで通信教育を受けなさいだって。
玲音はちゃんと勉強してるのに。
テストだってちゃんと受けているのに。
通信教育ってひとりぼっちな気がして、なんかさびしい。



■Lda014
このごろ、キョウコちゃんもあんまり口をきいてくれない。
私の気のせい?
でも買い物とかもマユちゃんとかと行ってるみたいだし。
私、嫌われちゃった?
キョウコちゃんは私といるときよりも楽しそうだもの。
もう学校に行きたくない。
でも、おこられるのもいや。



■Lda015
かぜで熱がでて今日も休み。
もう3日も休んでいる。
きっと学校のみんな、またずるしてるって思ってる?
だから誰も来ないし。
私、嫌われているもの。



■Lda016
うれしい。
キョウコちゃんやマユちゃんがおみまいに来てくれた。
よかった、嫌われてないんだ。
心配してくれてるんだ。
早くかぜを治して学校に行きたい。
ノートのお礼に、キョウコちゃんとマユちゃんをケーキ食べにさそいたい。
でも、よろこんでくれるかなあ。



■■SiteA Level09
■Lda017
かぜが治らない。
もう1週間になるのに。
ちゃんとお薬も飲んでじっとしているのに。
またお医者さんに行くのやだなあ。
ほんとにただのかぜなのかなあ。
熱がでて汗だく。
また着替えなきゃ。
学校に行きたいのに行けない。
不便な体。



■Lda018
お母さんがつきっきりで看病してくれてうれしい。
なんだか、お母さんをひとり占めしている気分。
おやつもリクエストしたりして、今日は特別やさしかった。
ありがとう、お母さん。
心配させてごめんなさい。



■Lda019
なんで?
トモくんが転校しちゃう。
はじめはトモくんと先生がおみまいに来たって聞いてびっくりした。
パジャマですごくはずかしくって、ちっとも顔も見られなかった。
最後になるかもしれないのに。
トモくんは私のこと気にしてくれたのかなあ。
でもきっと違う。
先生に言われてしかたなく来たんだ。
それでぜんぜん話さなかったんだ
でも、最後に握手できて、ちょっとうれしくて、悲しくて、涙こぼれそうになって。
私、ちゃんとお別れのあいさつもできなかった。
私っていや。



■Lda020
今日は日曜日。
看病してくれたお礼で、お母さんのかわりに私がご飯と洗濯。
ご飯はちょっと失敗しちゃったけど、洗濯はちゃんとできたかなあ。
お父さんがこげた玉子焼きを無理して食べてくれて。
ほんとにやさしいお父さん。
でも、食事中にビデオをまわすのはマナーが悪いと思う。
それにしてもお父さんのパンツって、なんであんなに大きいんだろう。
私のシャツと同じ大きさ。
お母さんのブラジャーが大きいのとおんなじかなあ。



■Lda021
男の人って胸が大きい人が好きなんだって聞いたことあるけど、なんのため?
だれかに聞いてみたいけど、やっぱりはずかしい。



■Lda022
ひさしぶりの学校。
意外と誰も気にしてないのかなあ。
心配して損した。
でも、普通でよかった。
ノートを貸してくれたお礼をキョウコちゃんに言った。
でも、キョウコちゃんのノートっていたずら書きがいっぱいで、ちょっと楽しい。



■Lda023
私のノートとくらべると、まるでおもちゃ箱みたい。
神谷先生の似顔絵がそっくりで笑っちゃった。
お母さんに見せたら、ばかなことしてないでちゃんと遅れたぶん勉強しなさい、だって。
先週とはまるで別人。



■■SiteA Level10
■Lda024
うれしい。
トモくんから手紙が来た。
元気ですって、ひとことしか書いてなかったけど、手紙が増えただけで私はうれしい。
ずいぶん遠くに行っちゃって、顔も見られないけど。
今までは私が見てるだけだったんだもの。
トモくんから手紙が来るだけでこんなにうれしいなんて。
返事を書かなくちゃ。
新しい便せん、明日買ってこよう。



■Lda025
でも、トモくんはきっとクラスのみんなに書いたんだよね。
私だけ特別なんて、そんなことあるわけがない。



■Lda026
明日はキョウコちゃんに、ノートのお礼にケーキを、学校の帰りにごちそう。
ふたりで街に行くのもひさしぶり。
登下校の買い物は、ほんとうはだめなんだけど。
みんなやってることだし、私がたまにしても。
そうだ、お母さんにおこづかいもらわなくちゃ。
おみやげで、お父さんとお母さんの分も買ってこなくちゃね。



■Lda027
キョウコちゃんに嫌われちゃった?
トモくんからのはがき、来てない?
女子でもらったのって、私だけ?
そんな...
たぶん、キョウコちゃんおこってた。
どうしたらいいんだろう。
私あわてちゃって、便せん買うの忘れちゃった。
神様、どうかキョウコちゃんと仲直りできますように。
私だけが特別だったら、なんて考えるとほんの少しうれしい。
トモくん、ありがとう。



■Lda028
キョウコちゃんがやっぱりおこっている。
実験室に行くときいっしょに行こうと思ったら、マユちゃんたちと出ていっちゃった。
だめ、もう嫌われちゃった。
あんなこと言わないでいれば、こんなことにはならなかったのに。
あやまっても、なんであんたに謝られなきゃいけないの、って言ってたし。
もう、私のこと嫌いになったんだ。
ほんとに嫌われちゃった。



■Lda029
今日も日記につけるようなことはない。



■Lda030
柊子さんのばか。



■Lda031
柊子さんが言ってた話なんて信じられない。
絶対元に戻らないよ。
だって、もう嫌われちゃったんだもの。
日記も書き続けなさいなんて。
私には日記なんか必要ない。
書くようなことなんてないんだから。
毎日同じように学校に行ってるだけだもの。
休み時間も給食もひとりだし
だれも、話しかけてくれないし。



■■SiteA Level11
■Lda032
ひどい。
机に落書きなんて。
キョウコちゃんはあいかわらず口をきいてくれない。
私、そんなことしてない。
トモくんとつきあったことなんてないのに。
みんなニタニタしてた気がする。
もう学校なんか行きたくない。



■Lda033
神谷先生がうちに来て、お母さんと話していた。
お母さんは困った顔をしていた。
これ以上欠席すると、卒業できないんだって。
お父さんとお母さんが、夕ご飯の後で話していた。
お母さんは泣いてしまって、お父さんは困っていた。
私は悪い子?
私なんか消えちゃえ。



■Lda034
今日、お父さんが会社を休んで、一日中私とお話ししてくれた。
やさしいお父さん。
転校したら、また友達できるかなあ
学校、楽しくなるかなあ。
トモくんがいる学校に転校できないかなあ。



■Lda035
また先生が来た。
中学には行けるらしい。
お母さんは先生に、何度もおじぎをしていた。
ごめんなさい、お母さん。
中学に行ったら、もう迷惑かけないようにするからね



■Lda036
今日、学校に行ったら神谷先生から、卒業が決まったから無理して学校に来なくてもいいって言われた
私が来るといや?
めんどうだから卒業させて、追いはらいたいんだ。
でも、もう二度と行かないから。



■Lda037
私ってここにいる意味あるの?
だれか私を必要としてくれてる?



■Lda038
お父さんに買ってもらったNaviに名前をつけた。
レインって。
もうひとりの自分。
たったひとりの友達。
でも、中学に行ったら、ほんとの友達をつくるの。
初めがかんじん?
明るくすれば、嫌われないかなあ。



■Lda039
パソコン通信の話をお父さんにしたら、いろいろ難しい設定をやってくれてつながるようになった。
お父さんもいろんな本を読みながら、ふたりで5時間ぐらいかかってつながったときに、お父さんたらお母さんまで呼んで大よろこび。
家族3人でこんなによろこんだことって、しばらくなかったんだって気づいた。
私が学校に行かなくなったりして、それからお父さんもお母さんも楽しくなくなっちゃったんだよね。
ごめんなさい。



■Lda040
ネットワークってふしぎ
ここなら、顔も見せなくできるし、はずかしくない。
なんだか、ちがう自分になれそう。
いろんな人がいて、私なんかトラブルだらけで困っていると、親切な人がいっぱいいて。
私がこんな親切にしてもらえるなんて、うれしくてしかたがない。



■■SiteA Level12
■Lda041
今日も一日中ネットで遊んだ。
ネットの自分は、おどろくほど素直になれる。
私のハンドルは、レイン。
そのままだけど、女の子ってわからないみたい
おもしろいことがあると、すぐメールで教えてくれるし、みんな仲良し。
ここならだれにもいじめられない。
一日中モニタを見ていると、目が痛い。
でも、目なんて悪くなっても、私にはいいことだもの。



■Lda042
プログラムなんて聞いたら、なんか難しそうだったけど、調べてみたら簡単そうなのもあるし。
どうせ、今の私には時間もあるから、ちょっと勉強しようかな。
手に職があれば、きっと困らないもの。
いつまでも、お父さんやお母さんに守ってもらえないんだ。
明日、図書館に行って本を借りてこよう。
オンラインで勉強してもいいけど、ずっーとつなぎっぱなしだと、もしかしてだれかが電話くれても、電話がつながらないかもしれないし。



■Lda043
もしかして、キョウコちゃん心配してくれてるかも。
そんなことないか。



■Lda044
ネットでゲームを拾ってきた。
友達ネズミ講ゲームっていって、友達にチケットを売ってお金をためていくゲーム。
でも、あんまり調子に乗ってお金をためるとうらまれる。
それで私を殺そうとする人がでてくるから、その人をうらむ人を煽動するの。
初めはゲームだなんて思っていたけど、そのうちこわいっていうより、気分が悪くなって泣きたくなった。
ゲームの感想を送ってくれってアドレスが書いてあったから、正直に感想をメールした。
私の居場所がけがされたようで、なんだかさびしい。
私はこんなの好きじゃない。
みんなが幸せに笑えて楽しめるものがいい。
私にはにあわないの?



■Lda045
卒業式だったけど、やっぱり行きたくなかった。
中学に入ったらちゃんといく。
絶対に。
約束する。
もうお母さんをなやませたりしない。
私の服、クリーニングに出してくれたんだね。
ありがとうお母さん。
ごめんなさい。



■Lda046
みんな、私のことどう思ってるの?
だれもなにも思ってない?



■Lda047
今日から春休み、っていっても私はこれまでもお休みだったけど。
図書館にいりびたってUnixの本を読んでいたら、となりにいた大学生ぐらいのお兄さんにへんな目で見られた。
むずかしい漢字や専門用語が多くてたいへんだけど、私はこういうのが好きなのかもしれない。
ぜんぜん苦にならないし、むしろ今は国語とか算数よりもおもしろい。
英語がちょっとできるようになって、だいぶわかりやすくなったけど、まだまだわからないことはいっぱい。
お父さんに今度聞いてみようかな。
でも、お父さんもあのお兄さんみたいに、へんな目で見るのかなあ。



■Lda048
今日、メールといっしょに送られてきたファイルをデコードしたら赤ん坊の死体だった
送り主はわからないようになってたけど、あの悪趣味なゲームの作者なのかなあ。
なんだかメールを開くのがこわい。
でも、私はここから離れられない。
少なくとも、中学に行って普通の生活になるまでは。
中学に行ったら、いろいろいそがしくなるし、友達と遊んだりで、ネットに来なくなるかもしれないから、今のうちにいっぱい勉強しよう。



■■SiteA Level13
■Lda049
今日の夕食はさびしかった
お父さんが長期の出張で外国に出かけるんだって。
いきなり言われたから、びっくりしちゃってなにも言えなかった。
2ヶ月ぐらいって言ってたけど、突然涙が出てきちゃって、ご飯が食べられなくなった。
お父さんは心配そうな顔をして、私のことを抱きしめてくれた。
明日、お母さんといっしょに空港までお見送り。



■Lda050
お父さんの仕事ってたいへんそう。
私も大人になったら、仕事ができる人になりたい。
お父さんみたいに、自信を持って生きていける人になりたい。



■Lda051
今日はお父さんのお見送り。
お母さんもさびしそうだった。
エスカレータで、何度もふり返って手を振ってくれた。
帰りにお母さんがレストランに連れて行ってくれた。
にぎやかでおいしかったけど、明日からはお母さんとふたりだけの夕ご飯なんだって思ったら、ちょっとさびしい。
きっとお母さんもさびしくなるのが、いやだったのかなあ。
神様、お父さんが無事に帰ってきますように。



■Lda052
お母さん、玲音とじゃ不安?
私、おかしいし。
でも、大丈夫よ。
お母さんに迷惑はかけないから。



■Lda053
ネットの仲間にあのメールのことを話したら、ウサギさんって人がトレースのしかたを教えてくれた。
ホストのログがまだ消えてなければ、追跡できるかもしれないんだって。
ほんとはいけないことなんだけど、なんだか探偵みたいでどきどきする。
悪いのはむこうなんだから、ちょっとぐらい悪いことしてもいいよね。
私はどうせ悪い子なんだし。
私は性格に問題があるっていわれてもしかたがない。
だって、私はおかしいんだもの。
おかしいのが私?
ねえ、おかしいよね、ウサギさん。



■Lda054
昨日教わったとおりにホストに入った
意外と簡単だった。
私ってこういうことの天才なのかも。
ログをダウンロードして調べたら、足あとが残っていた。
いくつかサイトを経由して、どこかのBBSから送ってきたらしい。
もう一度あの人にメールをして、わなをしかけることにした。
ああいうことをする人は絶対許さない。
私はもう泣き寝入りなんかしない。



■Lda055
自分の力で解決する。
自分の力で。
今の私は、それができるはず。



■Lda056
やっぱりそうだった
メールを送ってから2時間もしないうちに、バイナリメールが来た。
ちょっと見てもいいかなって思ったけど、絶対へんな写真だからデコードして感染させてからエンコードした。
これであの人は、二度とこんなことはしなくなる。



■Lda057
彼のホストの情報を、ミラーサイトに公開した。
画像関係の拡張子は、どうせへんな写真だから見なかったけど。
テキストも気持ち悪かった。
でも、本当に彼が犯人だったのか、不安になってきた。
ぜんぜん違う人のIDで、しかも別な持ち主のデータだったら。
もう二度とこんなことをするのはやめよう。
他人ができないことをできるのは、気持ちがいい。
私ってへん?
こんなに気持ちがいいことなんて。



■Lda058
ひどい。
でも、しかたない。
私の日記が読まれている。
コピーされて、FTPサイトにいやらしいタイトルをつけられて公開されていた。
削除したけど、もう20人ぐらいの人が読んでいた。
なんでこんなことになっちゃったんだろう。
そうだよね、私ができることぐらいむこうもできるもんね。
しばらくネットにつながんないようにして様子を見たいけど、こうしている間にもどこかのサイトにコピーされているかもしれない。
検索エンジンと削除するロボットを、今日中につくってネットに流そう
でも、相手が私の日記のバックアップを取っていたら?
きっとあんなへんな人だから、絶対に取っている。
くやしい。
私だけじゃ勝てない
やっぱり私の力ってこんなもの
ウサギさんに相談しようかな。
でも、なんとかなるかなあ。



■Lda059
ひどいことや気持ちの悪くなることを楽しむ人って、ほんとに私と同じ人間なのかなあ。
でも、そういう私は?



■■SiteA Level14
■Lda060
よくわかんなくなっちゃった。
あのへんな人が、ウサギさんの知り合いだって?
ぼくにまかせて一切忘れてくれ、だって。
くやしい。
絶対復讐したい。
泣き寝入りなんてしたくない。
忘れたいことを全部忘れたい。
いやなこと。
いやな私。
そんな魔法みたいなことできるの?



■Lda061
入学式が近づいてきた
今度こそ私は変わる
楽しくて普通の中学生で、部活なんてしちゃったり。
あんまり同じクラスの子がいませんように。
お母さんがお父さんと電話で話していた。
私のことが心配?
大丈夫だよ。
安心してね、ふたりとも。
ひさしぶりにまたあれが見えた。
自己幻像視?
それとも、私の頭はどこかおかしいの?
病気でも、病気じゃなくてもかまわない。
もうやめてほしい。



■Lda062
歯みがきしてたら血が出てきた
歯槽膿漏かなあ。
昔から歯は丈夫だったのに。
血の味が口に広がる。
ちょっぴり苦くていやな味
血が止まんなくて、なかなか寝れそうもない。
それと明日の入学式が不安だから?
ちょっとやな感じ。



■Lda063
私は違うの。
もう違う私なの。



■Lda064
入学式にお母さんが来てくれてうれしかった。
クラスにも小学校で同じクラスの子もいなくてほっとした。
担任の先生も優しそうな先生だし、友達もできた。
出席番号順に席が決められちゃったけど。
クラスのほとんどはなんか違う。
やっぱりつきあえない。
でもひとりだけ、隣の人とは気が合いそう。
物静かな人だったけど、私にはそういう人がつきあいやすい。
ミサトちゃん、これからよろしくね。



■Lda065
なんだか、これでなにもかもうまくいく気がする。
私にはひとり友達がいれば大丈夫。
ああ、お父さん早く帰ってこないかなあ。



■■SiteA Level15
■Lda066
今日はミサトちゃんといろいろな部活を見学した。
ミサトちゃんは運動は得意みたいだけど、私は運動はやっぱりだめだから、文化系かな。
ミサトちゃんはバイオリンを子供の頃からやってて、コンクールとかも出ていたらしい。
すごい。
パソコンもやってるみたいだったけど、私は言わなかった。
なんだかネットのことは秘密にしておきたかったの。
だって、ネットでは気を使わない自分でいたいから。
やっぱり部活はばらばらになりそうかなあ。



■Lda067
柊子さんのところに行って報告してきた。
ミサトちゃんのことばっかり話しちゃった。
元気になったねって言われててれくさかった。
そういえば柊子さんは部活なにやってたんだろう。
運動とか得意そうだもんね。
たしか柊子さんはアメリカにいたって言ってたから、日本とは違うかもしれないな。



■Lda068
ミサトちゃんが、私といっしょの部活にしようって言ってた
音楽はミサトちゃんとレベルが違うし、ミサトちゃんも部活までは音楽はやりたくないって言ってたし。
郷土研究会の人たちが優しそうだったけど、ちょっとなんだかだし。
部活はやっぱり美術部にしようかな。
絵は昔から好きだったから、なんとかやっていけるかなあ。



■Lda069
ミサトちゃんって、私のことすごく大事にしてくれる。
いつも私たちいっしょ。
ミサトちゃんが休んだりしたら、すごくさびしいなあ。
もうひとりぐらい友達がいたらなあ。
私って浮気性?
なんかずるい考え方だよね。
ミサトちゃんはひとりでも大丈夫なのかなあ。
明日、休んでみたらミサトちゃんはどう思ってくれるのかなあ。
そんなことして試したら、嫌われるのあたりまえだよね。



■Lda070
別に本当に休もうとしたわけじゃないのに、頭が痛くて、あれが見えて結局休んだ。
お母さんも仕事に行って、ひとりぼっちだった。
小学校のときはわりと平気だったのに、なんでこんなにさびしくてつらいんだろう。
ミサトちゃんのせいかなあ。
お父さんに電話してみようかなあ。
でも、国際電話って高いから、お母さんおこるかなあ。



■Lda071
ミサトちゃんは強いのかなあ。
私が休んでも平気だったみたい。
ちょっとがっかり?
私って独占欲が強いのかなあ。
もしかして私以外にも友達がいて、私が独占しているだけ?
いやだなあ、疑ってばっかり。
私、またいやな子になってる。
部活で先輩たちといっしょに、画材屋さんにスケッチブックを買いに行った。
パステルがかわいかったんで、クロッキーといっしょに買って、晩ご飯の前に絵を描いていたら、お母さんにおこられた。
においが結構するみたい。
私はそんなに嫌いなにおいじゃないかな。
勉強も部活もがんばるぞ。
ファイト、玲音。
なんちゃって。



■Lda072
無理してるの?
無理なんかしてないよね、私。



■Lda073
柊子さんの絵を描いたから、柊子さんのところに寄って見せに行ったら、警備員のおじさんが今日は出張だって言ってた。
忙しいんだなあ。
お父さんがもうすぐ帰ってくるし、この頃いい感じ。
あれも見えないし、ネットに久しぶりに行ってみようかなあ。
ウサギさんともごぶさたしてるし、あのときのお礼をしなくっちゃ。
前向きな自分が結構かわいい
うふふ。



■Lda074
本当に無理に笑ってない。
これが私。



■Lda075
ネットであれが見えた。
こんなこと今までなかったのに。
なんで?
でももうネットに行く必要もないし、とりあえずウサギさんにメールを書いておいたから、またしばらくアクセスしないようにしよう。
せっかくうまくいってるんだもの。
大丈夫よね、玲音。
私はもう、ひとりじゃない



■■SiteA Level16
■Lda076
お父さんが帰ってきた。
いっぱいいっぱい話した。
自分のこと、部活のこと、ミサトちゃんのこと。
お母さんが、お父さんは疲れてるからまた明日にしなさいって言うまで、ずーっとしゃべりっぱなしで、お父さん疲れちゃったかなあ。
にこにこ聞いてくれたけど。
おみやげにクマのぬいぐるみを買ってきてくれた。
目がくりくりしててかわいい。
名前はなににしようかなあ。
うーん。



■Lda077
お父さんってこんなににこにこしてたかなあ。
自分が変わると、人も変わって見えるのかなあ。



■Lda078
お父さんが、柊子さんにって、おみやげを渡すように頼まれたから、学校が終わって先生のところに行ってきた。
なんか柊子さん元気がなくって、ちょっと雰囲気が変わってた。
おみやげの袋も開けなかったし。
疲れているのかなあ。
なにが入ってたんだろう。
化粧品かなあ。
お母さんも化粧品とか、高そうなバッグだったし。
私もいつか化粧とかするんだろうなあ。
この顔で化粧したら似合わないよね。
ミサトちゃんとかは大人びた感じだから、きっと似合うよね。
あ、お父さんがおみやげ余ったって言ってたから、ミサトちゃんの分ももらおう。



■Lda079
でも、変に高いプレゼントもよくないよね。
だって、私たちまだ中学生なんだし。



■Lda080
ミサトちゃんが学校を休んだ。
ひとりぼっちってほどじゃなかったけど、ちょっとさびしい
部活もなんだかさびしくって早退してきちゃった。
せっかくおみやげを持っていったのに。
明日はミサトちゃんが学校に来ますように。



■Lda081
私にはミサトちゃんが必要なの。
ミサトちゃんは、私が必要?



■Lda082
今日もミサトちゃんが休んだ。
先生に聞いてお見舞いに行こうって思ったら、昨日ミサトちゃんのお母さんが来て、本人の希望でお見舞いはご遠慮させてくださいって言われたんだって。
どこが悪いんだろう。
あんなに元気だったのに。
そういえば、ミサトちゃんってあんまり自分のこと話さないもんね。
私もいっしょだけど、私の場合は話したら嫌われちゃうもの。



■Lda083
ミサトちゃんには、ほんとは話したいんだよね。
でも、私は臆病者だから。
変わってない?
それとも、臆病な私は死んでしまったほうがいいの?



■Lda084
ミサトちゃんが学校に来たけど、まるでなんにもなかったかのように普通だった。
病気ってなんだったのって聞いたら、かぜだって言ってたけど。
とにかく治ってよかった
明日、渡せなかったおみやげを持っていこう。
久しぶりだったから部活はお休みして、帰りにアイスクリーム屋さんに行った。
やっぱりミサトちゃんがいると楽しい。
よかった、元気になって。



■Lda085
これでいつもと同じ。
なにも変わらない。
もう私は、これでいい。



■Lda086
ウサギさんからメールが来てるかもしれないんで、メールだけチェックしてたら、また変なメールが来た。
今度は女の人が、裸で縛られて殺されている写真。
でも、送り主がウサギさんになっていた。
ウサギさんがそんなことをするわけがない。
またあいつだ。
ウサギさんにメールで知らせておこう。
信じられない。
どうしてこんなことするんだろう。
もうメールを見るのも怖い。
ちゃんと調べたい気もするけど、ネットにアクセスしてまたあれが見えたら...
せっかく治りかけてきたのに。
もう私は病気なんかじゃない。



■Lda087
そう、病気なんかじゃないんだ。
柊子さんも言ってるもの。
先生が言うんだから、間違いないよね。
信じていいよね?



■■SiteA Level17
■Lda088
文化祭で出展する絵を描かなくちゃいけないけど、なにを描こうかなあ。
あんまり、なにが描きたいってないかなあ。
副部長さんが、なんか身近なものでいいよって言ってたけど、なにかなあ。
ビケちゃんとか?
ミサトちゃんとか?
お父さん?
お母さん?
柊子さん?
自分?
人物ってなんか恥ずかしいな。
似てなかったら恥ずかしくていやだし。



■Lda089
ミサトちゃんはなにを描くの?
玲音?
それとも、私の知らない誰か?



■Lda090
ミサトちゃんって、パソコンで絵を描いているとか言ってたけど、私もやってみようかな。
ミサトちゃんに教わってみよう。



■Lda091
ソフトってこんなに高いんだ。
タブレット?も必要だし、スキャナもあったほうがいいし、なにしろ今の機械だとつらそう。
私のおこづかいじゃ絶対買えない。
ミサトちゃんのうちってお金持ちなのかな。
お父さんに相談してみよう。
お金がないとなにも買えない。
お金がいっぱいあったらいいな。
なにをしよう。
お父さんにもお母さんにもプレゼントしたり、ミサトちゃんといろんなことして遊べるなあ。
想像するだけで楽しい。



■Lda092
お父さんの会社の人でグラフィックをやってた人がいて、安く譲ってもらえそう。
早く来ないかなあ。
そうしたらミサトちゃんにうちに来てもらって、いろいろ教えてもらおう。
楽しみだなあ。
そういえば友達が遊びに来るなんて、何年ぶりだろう
部屋をちょっとは片付けて、女の子っぽい部屋にしよう。
ミサトちゃんの部屋ってどんな部屋なのかなあ。
きっときれいな部屋なんだろうなあ。



■Lda093
私の部屋って、なんか女の子っぽさが少ないなあ。
でも、私には似合わないよね。
私、わかってるんだ。



■Lda094
今日、学校でミサトちゃんが男の子に呼ばれていたから、なんだったのって聞いたら、つきあってほしいって告白されたんだって。
ミサトちゃんはぜんぜん興味なさそう。
私だったら、ちょっとはうれしくなっちゃうかな。
告白した人、かわいそうにふられちゃったんだね。
結構かっこよかったのに、かわいそう。
ミサトちゃんってきれいだし、頭もいいし、もてるけど、男の子嫌いなのかなあ。
すごく迷惑そうな顔してた。
ひょっとして、私が知らないだけで、もう誰かいたりして。
それもさびしいなあ。



■Lda095
全部知るなんて無理だよね。
私はミサトちゃんじゃないし。
でも、昔の私だったら、私もそうしてたかも。



■Lda096
ミサトちゃんに、誰かつきあってる人いるのって聞いたら、笑われた。
そうだよね、私たちいつもいっしょなんだから。
体育の着替えのとき、ミサトちゃんの胸を見たら大きかったなあ。
私の胸はぺったんこ。
うらやましい。
そういえば、私はまだあれもないし。
みんなはもう女の子になってるのに、私って遅れてるのかなあ。



■Lda097
体なんてどうでもいいよね。
大事なのは心だよね。
心が病んでたら、誰も私を好きになってくれないもの。



■■SiteA Level18
■Lda098
今日は柊子さんのとこに行ってきた。
いつまで続ければいいのかって聞いたら、柊子さんは困った顔をしていた。
治療だなんて思わないで、遊びにくるつもりで来てくれればいいなんて言われても、今日だってミサトちゃんに言い訳するのいやだったもの。
ミサトちゃん、なんて思ったかな。
ミサトちゃんに秘密を作りたくないけど、でも正直に話すのも怖い。



■Lda099
柊子さんは柊子さんでお仕事なんだもんね。



■Lda100
ミサトちゃんがプレゼントをくれた。
おみやげのお礼だって。
ミサトちゃんがバイオリン弾いているCD。
すっごくきれいな曲で、まるで夢の中みたい。
ほんとに上手なんだなあ。
渡してくれるときにちょっと照れていたのが、ミサトちゃんらしくなくってかわいかった。
ミサトちゃんもあんな顔するんだ。
私だけが知っているミサトちゃんが、増えたようでうれしい
お母さんに聞かせたら、あんまりうけなかったなあ。
バイオリンの音が嫌いなの?



■Lda101
新しいパソコンが家にきた。
なんだかものすごく高そう。
ちっちゃくって丸っこいんだけど、すごく速いらしい。
今まで使っていた機械と種類が違うらしいんだけど、アプリケーションの操作は共通だから、あんまり問題ないって言ってた。
なんか自分がすごくなった気がしてうれしい。
ありがとう、お父さん。
大きくなったら情報処理の関係の仕事とかやるのかなあ。
せっかく勉強したんだから役に立てたいけど。
でも、機械としか仕事をしない人にはなりたくない。
いっぱい人と会う仕事もつらいかもしれないけど。



■Lda102
ミサトちゃんがうちに来てくれた。
お母さんもちょっとご機嫌、かな?
私が絵の描き方を教わろうと、部屋にミサトちゃんを呼んでからも、なにかとのぞきに来てた。
お父さんといっしょに4人で夕ご飯。
楽しかった。
あんまり教われなかったけど、またうちに来てくれるって言ってたし。
お父さんの車でミサトちゃんのうちまで送ったら、やっぱりミサトちゃんのおうちってお金持ちの家がいっぱい建っているところにあった
まるで夢みたいなおうち。
門のところまでミサトちゃんのお母さんが来て、お父さんとあいさつしてたけど、すごい美人。
女優さんみたい。
やっぱりミサトちゃんみたいにきれいな子は、ああいうお母さんから生まれるんだろうなあ。
私のお母さんからは、私しか生まれないよね。
お母さん、ごめんなさい。
でも、今日は本当に楽しかった。



■Lda103
生まれたときから違うんだね。
でも、私があんなところで生まれてたら、ミサトちゃんみたいにかわいい子になれたかなあ。



■Lda104
文化祭に出展する絵は描いたけど、やっぱり私、才能ないのかなあ。
みんなとくらべるとぜんぜん下手。
ミサトちゃんは上手だった。
まだ途中って言ってたけど、そのままでも充分魅力的。
ペガサスの絵なんだけど、空に吸い込まれていきそうな深い青の光が印象的で、まるでペガサスがほんとに空を飛びそうな躍動感があって。
私が描いたら、きっと飛びそうにないかな。
やっぱり、自分の描きたいものを描くかな。
ほんとは大好きなミサトちゃんを描きたいけど、ミサトちゃん、いやがるかなあ。



■Lda105
ちょっとだけうらやましいよ、ミサトちゃん。
ミサトちゃんは、なんでもできるんだね。
私なんてネットのことぐらいしか、ミサトちゃんに勝てるものないよ。



■Lda106
ミサトちゃんの顔を思い出して一生懸命デッサンしたけど、似てるかなあ。
お母さんに見せたら、似てるかなって首かしげていた。
お父さんはほめてくれたけど、やっぱり自信がない。
文化祭はあきらめよう。
あと、今日、新しいNaviの使い方がわかんなくて、本をまた買ってきた。
この種類のパソコンの本が少なくって、あんまり選びようがなかったけど、とりあえず対応するコマンドリストが書いてある本を買った。
Unixベースなんでわりとなじみやすいけど、アセンブラがよくわかってなくって困ってたから助かったかな
とりあえず2台をつないでファイル交換できるようにして、今日はおしまい。



■Lda107
今日、帰り道に事故を見た。
建築現場で上から物が落ちてきて、人が死んじゃったらしい。
パトカーとか救急車とかがたくさん来ていて、人がいっぱいいてよくわからなかったけど、かわいそう。
突然そんなことになったら、いやだ。
私は、そんなの...



■Lda108
ミサトちゃんの絵が完成した。
美術部でも評判になっていた。
すごくきれいで、もう芸術って感じ。
50号の油彩だから目立つし、文化祭でもきっと目をひくだろうな。
私は10号のキャンバスにパステルで描いた上に、水彩ペイントした。
ミサトちゃんは上手ってほめてくれたけど、やっぱりミサトちゃんの絵を描けばよかったかな。
絵でもどこか自分を出し切れてないって感じがする。
私は、どんな絵を描けばいいの?
ミサトちゃんの絵は、ミサトちゃんって感じがするもの。
優しくて、きれいなんだけど、内面に強さを秘めていて...



■■SiteA Level19
■Lda109
柊子さんって、あんな人だっけ?
なんか今までと違う気がする。
この頃忙しいから?
なんかよそよそしいもの。
今日も絵のことで相談したら、絵のことなんて部活の人に聞いてだなんて。
機嫌悪かったのかなあ。
それとも、私がもう治ってきたんで、じゃまなのかなあ。
柊子さんは、カウンセラーだもんね
私がおかしくなればなるほど、柊子さんの仕事は増えるんだもんね。
研究レポートの役に立てなくてごめんなさい。
そうだったら、もう来なくていいって言ってくれればいいのに。



■Lda110
もう行きたくないのに。
私はなにも困ってないんだから。
私にはもう、柊子さんは...



■Lda111
お父さんもお母さんも、このごろちょっとそっけない。
以前は私のことが原因でまとまっていた家族が、私に問題なくなってきて、ばらばらになってきたのかなあ。
それとも、今まで私のせいできなかったことをするので、忙しいだけなのかなあ。
かまってくれないからすねるなんてぜいたくだよね。
今までさんざん迷惑かけてきたんだから。



■Lda112
お父さんはお母さんを愛してないの?
誰か教えて。



■Lda113
あれが見えなくなってずいぶんたつ。
私はすっかり普通の子に戻れたんだ。
友達もいるし、親子でちょっとけんかしたり、仲直りしたり、まるで普通の家族。
もうなにもかも大丈夫。
私は普通の子。



■Lda114
普通っていいよ。
だって誰からも変な目で見られない。
目立ちたがり屋の人の気持ちなんてぜんぜん理解できない。
自分をそんなに主張するほど、私には自信はない。
でも、普通になったからお父さんもお母さんもかまってくれないの?
ミサトちゃんは違うよね?
普通の私と友達なんだよね?



■Lda115
そういえば、ずいぶんメールを見てないなあ。
ネットであれが見えたり、意地悪なメールのせいでやめていたんだ。
ミサトちゃんもネットをやっているって言ったから、アドレス交換しようかなあ。
私がネットだと誰とでも仲良くなれるぐらい活動的にしてるの知ったら、ミサトちゃんびっくりするかなあ
それにメールで連絡取れたら、電話じゃなくても連絡取れるもんね。
この頃玲音の長電話で電話代が大変だって、お母さんが文句言ってたもの。
明日ミサトちゃんに話してみよう。



■Lda116
長電話してる私、なんだか自分でも不思議なくらい話せている。
私ってほんとはおしゃべり?
この調子なら、どんな人とでもいっぱい話ができそう。



■Lda117
ミサトちゃんに断られちゃった
メール見るのめんどくさいんだって
ネット自体にあんまり興味がなさそうだった
ミサトちゃんもメールでいやな目にあったのかなあ。
ちょっといつもと違う感じで断ってきたもの。
なんだか残念。
もっと喜んでくれると思ったのに。
ちょっとさびしかった
でも、ミサトちゃんは電話で話してくれるんだもの。
学校でも家でも、私たちはいつでも話ができるんだ。
せめてネットぐらいはお互いひとりでいたいんだよね。



■Lda118
ミサトちゃんとネットでも話したいなんて、玲音のわがままだよね。



■Lda119
今日、メールをチェックしたら30通ぐらいたまっていた。
送り主のわからないメールは開かないで削除した。
ウサギさんからのメールは来てなかった。
ちゃんと届かなかったのかなあ。
それとも、まだ読んでないのかなあ。
久しぶりにニュースグループをチェックしたら、パケットが何度も落ちてしまった。
メンバーも知らない人だけになってたし。
そうだ、絵の好きな人たちのニュースグループに登録しよう。
もしかしたら私と同じぐらいの人がいるかもしれないし。
ネットなら気がねなく話せるし。。



■Lda120
ネットは大人の男の人ばかり。
女の子はいないの?
男の人でもかまわないけど、やっぱり私は女の子同士で話がしたい。



■■SiteA Level20
■Lda121
文化祭はミサトちゃんの絵の話しで持ち切りだった。
美術の風見先生の知り合いの偉い人が見に来て、感心してたって。
ミサトちゃんすごい。
ミサトちゃんは私の一番の友達なんだよ。
すごいでしょ?
なんて誇らしいんだろう。
でも、ミサトちゃんはあんまりうかない顔をしてたなあ。
うれしくないのかなあ。



■Lda122
ちょっぴりだけど悔しいよ、ミサトちゃん。
私の絵もあんなふうにほめられたら。
気持ちいい?
恥ずかしい?
わからないや。
でもたぶん気持ちいいと思う。



■Lda123
風見先生がミサトちゃんの絵を地区の品評会に出したいって、今日部活が始まる前に言ってた。
1年生から選ばれるなんてすごい。
みんな文化祭の絵を知ってるから、先輩たちも納得してた。
なんだか鼻が高かった。
でも、やっぱりミサトちゃんはあんまり楽しくなさそう。
ちょっとこの頃変かなあ。
困ったことがあるなら、私になんでも言ってほしいなあ。
頼りないかもしれないけど。



■Lda124
ミサトちゃんにとってはあれくらい当たり前のことなのかなあ。
それとも、騒がれるのが嫌いなの?
玲音もあんまり騒がないようにしないと嫌われる?



■Lda125
美術のネットの人はなんだか気難しそうな人が多いのかなあ。
ちょっと仲良くなったからミサトちゃんの絵を送ってあげたのに、盗作だなんて。
ミサトちゃんがそんなことするわけないし、美術の偉い人が見ても気づかない盗作なんてないもの。
自分が否定されたようで悔しい。
もうこのネットには行きたくない。
まるでミサトちゃんのことが、自分のように感じられる。
そうだよね、ふたりでこれだけいっしょにいれば、だいたいのことお互い言わなくてもわかるものね。



■Lda126
ミサトちゃんは玲音のことわかる?



■Lda127
ミサトちゃんの絵が出展中止になっちゃった。
なんで?
先生もそうなっただけしか言わないし、ミサトちゃんも怖いくらいの表情で黙ったきりだし。
こんなミサトちゃんを見たのははじめて。
なにがあったんだろう。
ミサトちゃんがかわいそう。



■Lda128
今日はなんにも話せなかった。
電話もなんだかかけづらい。
ひょっとしたら、玲音の電話を待ってくれていたり。
でも、そうじゃなかったら...



■Lda129
今日ミサトちゃんが学校を休んだ。
部活で先輩がうわさをしていた。
前にネットで聞いたのと同じ盗作の話。
私が聞いているのに気づくととたんに話しをやめちゃったけど。
なんだか感じ悪い。
絶対にミサトちゃんはそんなことをしない。
絶対に。



■Lda130
どうしてもミサトちゃんに電話ができない。
困っているときになんにもできない。
私には勇気が足りない。
ミサトちゃんがなんて言うのか、想像できないよ。



■Lda131
今日もミサトちゃんは休んじゃったから、ノートをおうちまで持っていった。
ミサトちゃんのお母さんが出てきたんだけど、ミサトちゃんは出てこなかった。
そんなに具合が悪いのかなあ。
それとも、玲音のこと嫌いになったの?
だったら悲しいよ。
みんながなにを言っても、玲音だけはミサトちゃんの味方なのに。
会いたいな、ミサトちゃん。



■Lda132
会いたいだけなの。
会ってもなにも聞かないよ。
ミサトちゃんが話したくないことを、玲音は聞きたくない。



■■SiteA Level21
■Lda133
今日は職員室に言って風見先生に聞いた。
ミサトちゃんのこと、信じてるけどやっぱり本当のことを知りたかったから。
先生が言うには、アメリカの美術の雑誌に日本人の作品でほとんどおんなじ絵が載っていたって。
そんな雑誌見たくなかったけど、自分で確かめたかったんで見たら、やっぱりそっくりだった。
そっくりというよりも、私には区別がつかないぐらい。
その日本人はまだ駆け出しの画家みたいで、これが初受賞だって書いてあった。
家に帰ってきてからネットで検索したら、お父さんが日本画の大家で二世の画家ってことがわかったくらい。
絶対ミサトちゃんが盗作なんてするわけないけど、それにしても似ていた。
でも、ミサトちゃんがスケッチ始めたのってこれが発表される前じゃないかな。
ミサトちゃんの名誉のためにも、私が絶対調べてあげる。
おんなじときにおんなじような発想をすることってよくあるって先生が言っていた。
たぶん偶然だって。
ただ発表すれば問題になるだろうって。



■Lda134
おんなじものを見て、おんなじ考えをするなんて、ひょっとしたら当たり前のことかもしれない。
情報がいっしょで、思考や感性がおんなじなら、結果も同じになるもの。
しょせん、私たちはおんなじ人間だもの。



■Lda135
beauty of the artって雑誌、ホームページがあったから編集部宛にメールを出した。
返事来るかなあ。
来なかったら来るまで出すんだ。
絶対に調べるんだ。
そしてミサトちゃんの疑いを晴らすんだ。
でも、あんまりネットにいると、あれが見えそうで怖い。



■Lda136
もしかして私は変わってない?
私自身が変わってないって思ったら変わらないよね。
私は変わったんだ。
もう幻覚も見ることはない。



■Lda137
今日編集部からメールが来ていた。
よかった、やっぱりミサトちゃんのほうが早い。
はじめて掲載された号よりも、私がスケッチを見たのは2ヶ月以上前だ。
よかった。
でも、こんなことってよくあるのかなあ。
偶然にしても同じ時期に同じ絵、それも同じ日本人。
その描いた日本人ってどんな人なんだろう。
その人のホームページはなかったし情報がほしいなあ。
ミサトちゃんが絶対正しいってわかったから、これで安心して会える。
とにかく明日、ミサトちゃんのうちに行こう。



■Lda138
ミサトちゃんが転校?
どうして?
私になにも言わずに。
友達だったのに。
親友だったのに。
みんなは盗作がばれていづらくなったからだとか、ひどいこと言ってた。
許せない。
違う、盗作なんかしてない。
私はちゃんと調べたんだから。
みんなは本当のこと知らないくせに
でもなんで消えちゃったの?
ミサトちゃん、ひどいよ。
もうこのまま会えないの?
こんなお別れのしかた悲しすぎるよ、ミサトちゃん。



■Lda139
どうして人は調べもしないでうわさばかりするんだろう。
うわさで傷つく人なんかどうでもいいの?



■Lda140
またひとりぼっちになっちゃった。
でもミサトちゃん以外に友達をつくる気になんかならない。
それに友達っていっても、みんななにを考えているのかわからない。
もういいや。
めんどくさいし、学校に行っても楽しくない。
ミサトちゃんのいない学校なんて、ぜんぜん楽しくない。



■Lda141
また友達ができるのはいつなの?
そのときには、私はまた変わらなくてはいけないの?
私は私なのに。



■Lda142
今日、ミサトちゃんのうちに行ってきた。
でも、もうだれもいなかった。
もう引越しちゃったみたい。
本当になにも言わずにミサトちゃんは消えちゃった。
悲しい。
私のこと、友達って思ってくれてなかったの?
やっぱりミサトちゃんは、私のことなんてなんとも思ってなかったのかなあ。
電話も手紙もなにも来ないし。
そうだよね、友達だって思ってたら、絶対いきなり消えちゃったりしないよね。
ミサトちゃんは、私も他の子たちといっしょに悪口言ってると思ってるのかなあ
そうだとしたらもっと悲しい。
私だけは特別な友達だよね。
ね、ミサトちゃん。



■Lda143
あのとき電話してれば違ったの?
玲音がミサトちゃんの味方だって、ちゃんと言えてれば。
玲音はミサトちゃんのことしか考えてなかったのに。


■■SiteA Level22
■Lda144
柊子さんのところに行くのは今日でやめようと思った。
だって、柊子さんにミサトちゃんのことを話したら、人にはどんなに身近な人間にも話せないことがあるのよ、なんて。
私が自分のこと隠してたことが原因?
だからミサトちゃんも、私になにも言わずに転校しちゃったっていうの?
言えないことがあっても、私はそんなことを絶対にしない。
ひどいよ、柊子さんもミサトちゃんも。
だれも私をわかってくれない。
学校の勉強をする気がしない。
私はさぼり魔?
でも、おいてきぼりもいやだもの。
がんばんなきゃ。
興味があることを勉強すればいいって言われても、私が関心があるのは私のこととミサトちゃんのことだけ。
でも、もう終わり。
新しく興味を持てることを見つけなくちゃいけないんだ。



■Lda145
今日、お父さんとお母さんが大げんかをした。
いつもは絶対手を上げないお父さんが、お母さんをなぐった。
お母さんもお父さんに、近くにあったものを投げつけたりわめいたりしていた。
私は怖くて泣いているだけでなんにもできなかった。
けんかの原因ってなに?
あんなに仲がよかったのに。
私が原因?



■Lda146
私のまわりの人って、なんでこうなるんだろう。
私が普通になったから?
それとも以前は気がつかなかっただけ?



■Lda147
今日、お母さんにカウンセリングをやめたいって言ったら反対された。
別に今は大丈夫でも、またいつなるかわからないからって。
この頃、また学校に行かない日が続いてるし、納得したくないけどお母さんの言うとおりだった。
明日も柊子さんのところに行かなくちゃならない。
いやだ、私には自由なんてないんだ。
私はしょせん、みんなに看護される患者なんだ。
もうこんなのやだ。



■Lda148
私がいる意味ってなんなんだろう。



■Lda149
今日、死にたくなる時ってこんな時なんだろうって思った。
2年になったクラス替えで、キョウコちゃんといっしょのクラスになった。
キョウコちゃんの前に立つまでは絶対昔のようにならないって思っていたけど、いざ目の前にしてみるとあっさり昔の私に戻った。
キョウコちゃんはなんにもなかったのように、私の横を通ってほかの子と話していたけど、きっと私のこといろいろ話しちゃうんだろうな。
しかたがないよね、ほんとのことだもの。
暗くて学校さぼってばかりいる、変なやつだもの。
私も転校したい。
消えちゃいたい。



■Lda150
ひとりで図書室に通って、本ばっかり読んでいる。
暗いよね。
でも、休み時間にひとりでなにもしないでいるのってつらすぎる。
せめて本でも読んで気をまぎらわさないと。



■■SiteB Level01
■Lda151
お父さんとお母さんがまたけんかをしている。
私のことでもめている。
あまりにも悲しくてそこにいることができなくなって、飛び出してしまった。
でも、お父さんは心配して部屋まで追いかけてきてくれた。
お父さんは泣いている私を見て、謝っていた。
なんでお父さんが謝るの?
悪いのは私なんでしょ?
謝らなくちゃいけないのは私なのに。
ごめんなさい、お父さん。



■Lda152
ほんとに私が悪いの?
私の悪いところを教えて。



■Lda153
私はなにをしたんだろう。
気がついたらベッドの上だった。
いつもと同じように、学校に行ったつもりだったのに?
倒れたの?
でも学校に行く途中のことしか思い出せない。
お母さんに聞いても、なにも答えてくれない。
なんか、血なまぐさいにおいがする。
なにが起こったの?
また夢で幻覚が見える。
いろんな声が聞こえる。
もう気が変になりそう。
やっぱり治ってない。
私は変なんだ。
柊子さんに診てもらわなきゃ。



■Lda154
もう大丈夫だって思っていたのに。
なにがあったんだろう。
なぜなにも憶えていないの?
頭の中がスパークしたように白いもやがかかっている。
いろんなことが混乱して、制御できない。



■Lda155
お母さんが学校に休学届けを出したって言っていた。
もう学校に行かなくてもいいんだからうれしいはずなのに、さびしい。
本当に社会から隔絶されたんだ。
みんなから拒絶されたみたいでさびしい。
もう私は普通に生きられないの?
お父さんはずーっと帰ってこないし、お母さんは疲れた顔をしている。
どうしてお父さんは帰ってこないの?
お父さんは私に会いたくないの?
私はお父さんに嫌われちゃったの?
お父さんに会いたい。
泣き疲れていつの間にか眠ってしまったら、また幻覚が見えた。
怖い。
寝ても寝てなくても見える。
自分が自分で信じられない。
わからない。
私が自分の知っている私であることを、だれか証明してほしい。
お父さんに会いたいよ。
会って抱きしめてもらいたい。
大丈夫だよって。



■Lda156
玲音の愛する人はみんな不幸になる?
私が好きだって思うから?



■■SiteB Level02
■Lda157
最近、通信教育とネットに明け暮れている。
毎日ブラウン管に向かっていると、気が変になる。
でもお父さんが私に買ってくれたPCだもの。
一生懸命勉強してるよ。
でも、お母さんが鍵を持って行っちゃって、私は家から出ることもできない。
だれか助けて。
ひとりぼっちはいや。
いい子にしてるからひとりにしないで。



■Lda158
ここから繋がれるのはネットだけ。
電話はかける相手がいなくちゃかけられないけど、ネットなら繋がるだけでいいんだもの。
そう、顔のないだれかと繋がれるの。



■Lda159
柊子さんのところに行くときも、お母さんに車で連れて行かれるようになった。
まるでお母さんに監視されてるみたいで嫌だ。
ちゃんとひとりで柊子さんのところに行けるのに。
柊子さんは私のこと、本当はどう思ってるんだろう。
気ままに話しをした記憶はあるけど、なにを話したかあんまり憶えてない。
柊子さんにどう思われても、もうどうでもいいんだ。
どうせ私はおかしいんだから、うんとおかしいデータを取ってよ。
もうどうだっていい。



■Lda160
私はお母さんから生まれたの?
ひょっとして、本当は他の人の子なの?
髪の色も違うし、顔だってそんなに似ていないもの



■Lda161
ネットでウサギさんを探し当てた。
だけど死んでた。
ログがあったのは私が前に通信したときまで。
アドレスはあるのに、ここ1年近くなにもしてない。
私とおんなじようにネットから離れたのかな?
クラッキングしてもおもしろくない。
だいたい私が企業情報とか国家機密を知ったところで、なんにも役に立たないし興味もない。
ほしいのは私自身の本当の姿。



■Lda162
自分の姿なんて幻想。
それともただの現象。



■Lda163
お父さんとお母さんが離婚した。
最後の日に、お父さんが私を優しく抱きしめた。
暖かくて優しいお父さんの胸に抱かれてうれしかった。
もうしばらく会えないんだよね。
でも、私はお父さんの娘でいいんだよね。
悪いのは私なのに。
原因は私なのに。
お父さんとお母さんを傷つけてしまったんだよね。
悪い子だね私。
お父さんと別れるのはつらい。
もう抱きしめてもらえないのかなあ。
絶対また会えるよね。



■Lda164
お父さん



■■SiteB Level03
■Lda165
広い家でお母さんとふたり。
今まではお父さんが庭の手入れをしてたから、お父さんがいなくなってから、だんだん雑草が伸びてきた。
お母さんもなにも言わない。
私も雑草が伸びてくのがちょっと楽しくって、毎日縁側でながめている。
ちっちゃな頃遊んでいたブランコも、雑草に囲まれて風にゆれている。
まるで幽霊屋敷みたい。
お父さんに会いたい。



■Lda166
雑草だけが生き生きしている。
ブランコは死んじゃったの?



■Lda167
お母さんがお酒を飲んで、酔っぱらって私に花びんを投げつけた。
やつあたりだ。
悪いのはお父さんを捨てたお母さんなのに。
でも、それも私のせい?
そんなに私が悪いんだったら、私なんて殺しちゃえばいいのに。
そうすれば離婚なんてしなくてすんだんでしょ?
私はいないほうがいいんでしょ?



■Lda168
お酒を飲む人が嫌いになりそう。
柊子さんもお酒を飲むって言ってたけど。
お酒を飲むとこうなっちゃうの?
私はいや。



■Lda169
今日、庭でアリジゴクの巣を見つけた。
アリが巣にすべり落ちていて、もがいていると、砂の中から一瞬にして足を引っぱられるようにアリが食べられてしまった。
アリは食べられる瞬間なにを考えているのかな?。
死んじゃうことわかってるのかな?
私はアリを見つけては捕まえて、アリジゴクの中に落としていった。
でもアリの気持ちはわからなかった。
やっぱり私おかしいよね。
なんて残酷なことしてるんだろう。



■Lda170
私がアリだとしたら、アリジゴクはだれ?
この家?
幻覚?
私自身?



■Lda171
アダルトサイトを見ているとばかばかしくなった。
女の人がはずかしい格好で写真に写っているだけ。
男の人が喜ぶのはわかるけど、こうして写っている女の人は、お仕事だからやっているのかなあ。
でも自分で勝手に写真を、ネットにアップしている人もいるし。
自分のはずかしい写真を見せることで、なにが得られるんだろう。



■Lda172
私の中にもそんなことをしたいって願望があるのかなあ。
でも、こんなサイトを見て楽しんでる人がたくさんいるのかと思うと嫌になる。
お母さんとお父さんがそういうことをして私は生まれてきたんだし、いつか私もそうして私の子供を生むのかなあ



■Lda173
精神病理学っていいかげんなのかなあ。
いろんな学説や治療法があっても結局治んないんじゃないかなあ。
ためしに私のケースをアップして討論させたけど、結局つまんない回答ばかり。
ひょっとして柊子さんもこのニュースグループに参加していたり?
そうだ、柊子さんの研究所にアクセスしよう。
きっと柊子さんの研究もあるはずだし、私のことどう研究しているか興味があるもの。



■Lda174
柊子さんの研究室の端末のアドレス調べておこう。
久しぶりにクラッキングしがいがあるかな。



■■SiteB Level04
■Lda175
おとといから今朝までかかったけど、どうしても入れなかった。
なんで?
研究室まで入れるのに。
患者のデータで、柊子さんの受け持ちのクランケのデータはあるのに?
ファイル名だけしかなくてデータがない。
ファイル情報を見てみると確実に更新されているのに。
データが見えない。
暗号化されているわけでもないし。
私の情報が他のクランケに比較して、重要なわけなんかないのに。
私だけがいない。
どういうこと?



■Lda176
私は特別なの?
私の情報だけがほしいのに。



■Lda177
お母さんは昨日から寝込んでいたから、柊子さんのところにひとりで出かけた。
柊子さんに私の研究レポートってどう書いているのか聞いてみた。
なんだかはっきりしない答えが返ってきた。
柊子さんが席をはずしたときに、柊子さんのノートブックからプレファレンスをコピーした。
これで柊子さんの私の研究データが、どこにどうしてあるのかわかるかなって思ったら、確かに研究室にデータを送っているんだけど、送信している量が異常に大きい。
画像データ?
それとも、音声データ
それから毎日更新されている文書があったから、日記かな。
でも、ホストにそのデータはない。
データを転送している時間が、だいたいいつも深夜なのでその瞬間にアクセスしてみよう。
これだけ大きなファイルだったら相当時間がかかるから、こっちからアクセスしてもばれないだろうし。
それに柊子さんは機械のことあんまり詳しくなさそうだし。
まるで柊子さんをだましているようで心が痛むけど、でもなんだか気持ちいい。



■Lda178
柊子さんの日記を手に入れた。
人の日記を読むのはいけないことだけど楽しい。
だんだん柊子さんが見えてきた。
柊子さんもただの女なんだって。
やっぱりえらそうにしててもこんなこと考えてるんだ。
くだらない。
男の人のことばっかり書いてある。
それにしても私のレポートってこんなに簡単だったの?
ちょっとがっかりした。
書き加えておこうかななんて思ったけどやめておいてよかった。
セキュリティが定期的にチェックしてて、クラッキングがばれちゃった。
でも足あと残ってないから大丈夫かな。



■Lda179
柊子さん、私が柊子さんの日記を読んだって知ったらどんな顔するだろう。
少しわくわくする。
私は悪い子だから。
でも、柊子さんもいけないんだよ。



■Lda180
お父さんがいなくなってずいぶんたつのに連絡も来ない。
もう、玲音のことなんか忘れちゃったのかなあ。
会いたい。
お父さんとずっといっしょにいたい。



■Lda181
本当にお父さんに会いたいの?
お父さんってどんな人だったの?
大きくて、メガネをかけていて、優しそうな目をしていて。
なんだかお父さんがよく思い出せなくなっちゃった。



■■SiteB Level05
■Lda182
フリーウェアのAIソフトにビデオのからサンプリングした声を元に、トーキングエンジンを改良してお父さんの口ぐせを入れ、音声発生できるようにした。
ひたすらせりふを入力したら、結構話せるようになった。
キーワードごとに乱数をつけてオートリンクしたら、ちょっと不思議な感じ。
ロボットみたいな声で、玲音楽しいかい、なんて話しかけてくる。
なんだか自分でもばかばかしいなと思うけど、うれしい。
今度は思考ルーティンをつけてあげよう。



■Lda183
娘がお父さんを育てるなんて、なんだかおかしいよね。
でも、お父さんがそばにいるみたいで少しうれしい。



■Lda184
お父さんに日本語辞書をつけた。
ちょっと硬い感じが、お父さんっぽい?
音声とテキストだけじゃさびしいんで、ビデオからキャプチャしてお父さんが画面でしゃべるようにした。
やっぱりありものの素材じゃ限界がある。
思考ルーティンは進化できるようにプログラムしてあるから、ネットで学習させてフィードバックしている。
ネットで勉強させているから、エッチな言葉は私よりもくわしい。
お父さんのエッチ。



■Lda185
画像認識で大まかな形や代表的な形のものは認識できるようになった。
お父さんに目ができたんだね。
玲音はちゃんと見える?
ファイルサイズが巨大になったので、LANで分散型にした。



■Lda186
やっぱり3Dレンダリングしてお父さんのモデルを作ることにした。
再生時にバッファが足りなくなって時々フリーズするけど、だんだん生きてるような雰囲気になってきてうれしい。
お父さんが買ってくれたPCに、お父さんの命を吹き込んであげる。
このPCはお父さんなんだ。
これでいつもいっしょにいられるね。
お父さんもうれしい?
そうだ、お母さんに見せたらびっくりするかな。
でも、もっとお父さんらしく作ってから見せよう。
お母さんがお酒を飲まないようにしかってもらうかな。



■■SiteB Level06
■Lda187
3Dモデラのレンダリングの速度を上げるために、CPUをマルチプロセッサからさらに4基増設した。
レンダリングエンジンのメモリも12Gに増やして、バスをほとんど通過しないで演算できるようにした。
でも、やっぱりしょせんCGだと限界かな。
作りこめば作りこむだけうそっぽくなる。
なんだかプロトタイプのほうがお父さんらしかったかな。



■Lda188
今日、お母さんにお父さんを見せてあげた。
すごい怖い顔をして私を見て、なにも言わずに部屋から出て行った。
私がいやみで作ったと思ったのかもしれない。
お母さんの気持ちをもう少し考えればよかったかな。
ごめんなさい、お母さん。
でも、お母さんはお父さんのこと嫌いなの?
玲音はお母さんのこと大好きだよ。
でも、玲音はお父さんのことも好きだから。
お父さんに会いたいだけ。



■Lda189
MITのファクトリーでロボットの研究をしている学生と話しをした。
今の私のレベルでもそれなりのものができるかもしれない。
これでお父さんをブラウン管から出してあげられるかも。
といっても、データが巨大過ぎるんでケーブル付きになっちゃうかもしれないけど。
そうしたら、昔みたいにお父さんに抱きしめてもらえる。
お父さんをもっと感じることができる。



■Lda190
プロトコル7対応のアクセラレータがほしい。
だれか持ってない?
タチバナの研究所の友達に聞いてみよう。



■■SiteB Level07
■Lda191
お金に弱いんだね、みんな。
そのほうが私は助かるけど。
企業秘密そんな簡単に知らない人に渡してしまうなんて。
でも、私に会ったらどんな顔するかな。
もうそんなことにも興味はないわ。
今はお父さんのことだけ。



■Lda192
人工の関節ってすごく高い。
人工の筋肉もおどろくほど高い。
といっても、お金を実際払うわけでもないからいいんだけど。
やっぱり頭を作るのに苦労しそう。
とりあえず上半身を作ろう。
電圧を確保するのにバッテリも必要だし、ケーブルもいっぱい買わなくっちゃ。



■Lda193
胸の中に発電機を入れて、お父さんが自活できるようにした。
ゆっくりでも動かせるように各関節にモーターをつけてあるから、発熱がすごくて本物のお父さんみたいに優しくて暖かい。
ちょっと疲れたから甘えてみた。
まるで赤ん坊のように、お父さんの胸にしがみついた。



■Lda194
男の人の厚い胸に肌を重ねていると、照れくさいけど、でも心のどこかですごく気持ちいいって感じている。
お父さんの手で私の体を、すみずみまで触ってもらう。
本当のお父さんとはこんなことしてないのに。



■Lda195
抱かれて声を聞いていると、本当に男の人に抱かれている気がしてきた。
体の奥が熱くなって、自分が興奮しているのがわかった。
お父さんに抱かれているからなのか、それとも違う人を想像しているのか。
わからない。
でも、こうしていると気持ちがいい。
本当はお父さんにこうしてもらいたかったのかな。
ただ私を守ってくれる人がほしかっただけなのかも。



■Lda196
私ってやっぱり異常なんだ。
柊子さんのことなんて、批判する資格なんてない。



■Lda197
お父さんは両腕と胴体まで完成。
腰までつけたかったけど、さすがに大きくなって部屋に置いておけなくなった。
またお母さんを悲しませるのは嫌だし、お父さんの住む家をどこかに見つけなきゃ。
せっかく会えたのにまた別居なんて悲しいけど、どこに家を買う?
お金はあっても子どもが家を買うなんてできないし、やっぱり空き家を探すしかない。



■Lda198
閉鎖された工場でいいところが見つかった。
家からもそんなに遠くないし、人もあんまり近寄らないみたいだし、明日にでもお父さんをそこに移そう。
でも、ホストまで含めるとそうとう重たいし、どうやって運ぼう?
あんなに大きいものを運んだら見つかっちゃうし、電源と専用線は?
だめだ、だれかを代理人に立てて工事をさせなくちゃ。



■■SiteB Level08
■Lda199
今日で工事が完了して引き渡しの日だった。
いっさい直接会わないでいる依頼人のこと、彼はどう思っているかなあ。
それにちょっと奮発したから、なおさら怪しいと思うかなあ。
しばらく彼の行動を見張っておくことにしよう。
お父さんを危険にさらすわけにはいかない。



■Lda200
今日、いよいよお父さんを移した。
ハードディスクだと重たいから、テープメディアにしたのはいいけど、デコードするのに時間がかかる。
でも、その間に腕や足のパーツを少しずつ運んだから、そんなに非効率ではなかったかなあ。
お母さんが酔っ払って寝てくれて助かった。
でも、これからお父さんに会いに行くときは、ちょっと大変かなあ



■Lda201
お父さんに足をつけようって思ったけど、下半身を作るのに抵抗がある。
なんだか気持ち悪い。
私のお父さんはやっぱり上半身だけでかまわない。
どうせケーブルもはずせないし。
それよりも頭がないのがちょっと気持ちが悪い。
しかたがないから空っぽの頭をつけたけど、なまじっかよくしゃべれるので、しゃべりの動作についてこれない顔うそくさくて嫌になった。
こんなのお父さんじゃない。
失敗。
しかたない。



■Lda202
私がお父さんって認識していたのは上半身だけ?
ひょっとして、その体すらも認めてなかったのかもしれない
私のイメージの中にあるのは、私より大きいなにか程度のもの?



■Lda203
今日、中学1年のときのクラスメイトにすれ違ったけど、むこうは私に気づかなかったみたい。
あんまりしゃべったこともないし、別にどうでもいいけど。
でも、制服姿を見たら少しうらやましかった。
もう私のことなんてだれも憶えてないよね。



■Lda204
制服もクリーニングに出したきり。
お店から受け取ったときのお母さんはさびしそうだったな。
せっかく買ってくれたのに。



■Lda205
クラスメイトだった子にメールをして、私のことを聞いてみた。
結局私が私って認識されたのは、このちっちゃな体だけなのかなあ。
だって、私なんて個性的じゃないし印象に残らないから。
私のことなんてだれも憶えてない。
なんか、お父さんを作っていると、自分の体がばかばかしく感じる。
私が私であるのは、私の思考ルーティンがあればいいんじゃないかって。
だってもう私は、現実世界との接点を必要としてないし、ご飯を食べないと死んじゃう私より、お父さんのほうが合理的だ。
お父さんは私よりも進化している?



■■SiteB Level09
■Lda206
お父さんにバグがあったみたい。
部屋から監視していると勝手に動いちゃうし、ひょっとして私に会おうとしてくれているのかなあ。
玲音はいつでもお父さんをちゃんと見てるし、繋がっているよ?



■Lda207
お父さんは本当にお父さん?
玲音のことをだれよりも大事に思ってくれるお父さん?



■Lda208
だれかがお父さんにアクセスしている。
だれ?
私のホストにアクセスする、いたずら屋さん。



■Lda209
久しぶりに幻覚を見た。
相手の正体はわからない。
幻覚の私、成長してる。
もう小学生ぐらい?
でも、あの頃の私とは違ってたぶん、意志の強そうな目をしていた
あの頃の私って、私だったの?
だめだ、やっぱり自分で許容できない。
柊子さんのところに行こう。



■Lda210
もしかして、柊子さんは私のことがわからない?
なんども、本当に玲音?って聞いてくるし、私の病状にも首をかしげてばかり。
これじゃなにしに行ったんだかわからない。
なんだか私におびえているみたい、柊子さん。
私がわからなくなってきているみたいだね。
私は変わってないのに。



■Lda211
そういう私もなにを話したのか、たいして思い出せない。
柊子さんがかわいそうで、助けたくなって、それから?



■Lda212
気になったので、柊子さんのノートブックにアクセスした。
私のデータが見える。
今まで見えてなかったのに。
とりあえずダウンロードして保存した。
この頃、妙に眠くなって必ず幻覚を見てしまう。
気が狂いそう。
また眠くなってきた。
さっきも寝ていたのに。
メールがなんだかいっぱい届いている。
見るのもいやだ。
眠い。
でも、寝てしまったら、また私も見てしまうかもしれない。
いやだよ。
お父さん。



■■SiteB Level10
■Lda213
メールの中に、ウサギさんのメールがあった。
まるで消える前のような、明るく優しいメールだった。
久しぶりってあいさつして、近況を書こうと思ったけど書けなかった。



■Lda214
私、どうしたの?
昔の私みたい。
だれ?私って。



■Lda215
いったい、どうして私のアドレスがわかったの?
ミサトちゃんのメールが私の隠れアドレスに来ていて、まるで仲のよかった頃のような口ぶりで、とつぜん占いの話をしている。
ウサギさんといいミサトちゃんといい、勝手だよね。
ずっと私は連絡を待っていたのに。
でも、急いで電話番号を書いたメールを出した。
電話はまだかかってこない。
また裏切られたのかなあ。



■Lda216
メーラのバグ発見?
作成日の年数がでたらめ。
もしかしてサーバの問題?
サーバ管理者にメールしなきゃ。



■Lda217
家にお母さんがいない。
どこに行っちゃったんだろう。
家出?
まさか。
どっかで酔っ払って倒れてしまっているのかな。
警察に電話して捜索を頼んだら、子どもだからって信用されないで、わざわざうちまで確認しに来た。
お父さんに知らせたいけど連絡できない。
お母さんしか連絡先知らないもの
若い警官が陰口を言っていた。
蒸発したとかって。
お母さんはそんな人じゃない。
くやしくて涙がとまらなかった。
あんまりくやしいんで警察のホストをめちゃくちゃにしてやった。
ざまあみろ。
私の大切な人を守るんだ。



■Lda218
無言電話とか、いやらしい変態電話がかかってきた。
電話を止めようと思ったけど、お母さんもお父さんもミサトちゃんも連絡が取れなくなったら困るから、できるだけ出たけど限界になって、寝るときは線をはずすことにした。
気がついたら、死ね変態、とか叫んでいた自分が怖い。



■Lda219
だれかが私をいらだたせようとしている。
なんで?
私にそんなことをするの?



■■SiteB Level11
■Lda220
朝起きたら拳銃を握っていた。
血なまぐさいにおいと鉄のにおいが目を覚ましてくれた。
もうわけがわからない。
私は絶対に狂っている。
怖くなって買い物袋に入れて、机の引き出しの奥に隠した。
鍵があるけどこんな鍵じゃだめだ。
そう、お父さんの中に隠しておこう。



■Lda221
お母さんも行方不明だし、お父さんも連絡がない。
ひとりぼっち。
お父さんに会いに行くと、私を抱きしめてくれた。
でも、おかしい?
なんで私だってわかったの?
音声認識?
足音の解析?
できなくてあきらめたはずだったのに?
そういえばお父さんの進化は異常かもしれない。
初めはうれしくて気にしなかったけど、今のスペックであの速度は異常だ。
いったいどうして?
私の知らないなにかが原因?



■Lda222
近所のおばさんがうわさをしている。
わざと私に聞かせようとしているの?
私が振り向いたら笑いかけるし、私になにをさせたいの?



■Lda223
私も自分のコピーをネットに作ることにした。
声もサンプリングして、画像のデータも細かく作った。
思考ルーティンはお父さんを改造して、同じく進化型にして、今度はネットに分散した。
これで私はネットのある限り死なない人間になった。
お父さんといっしょ。



■Lda224
まるで気休め。
こんなことが無意味なことってわかってるのに。
ネットの自分もおかしく進化しちゃうのかな。



■Lda225
一日のうち、半分以上が悪夢の中にいる。
ひょっとして悪夢の中が正解で、こっちの世界のほうが夢なのかもしれない。
今となってはどっちも変わらないのかもしれない。
幻覚が夢の中でも現実でも起こるから、ますます区別がつかない。
あの子はとうとう中学生になった。
私とも身長は変わらない。
まるで鏡を見ているよう。
でも、この子はだれにも見えないんだろうなって思う。
これまでだって見えなかったんだし、気にすることなんてないんだ。



■Lda226
ネットの私とお話。
自分だからなにを言っても気が引けない。
私は私だから、想像がつく。
わざと自分を怒らせたり笑わせたりして遊んだ。
私もきっと楽しかった?



■Lda227
柊子さんにお母さんのことを話したらきょとんとしていた。
柊子さんの様子が変だ。
なにか隠している。
今日のレポートをクラッキングしよう。



■Lda228
だれ?
お父さんとお母さんがいっしょにいる?
柊子さん、私のお父さんもお母さんも知ってるんでしょ?
いっしょにいたのってだれ?



■Lda229
お父さんを今日処刑した。
次はお母さんだ。



■■SiteB Level13
■Lda230
1年ぶりよ、玲音。
いや、玲音、日記で報告するなんて久しぶりでいい感じでしょ。
これが私のカウントダウン。



■Lda231
玲音、ほしいものはなに?
快感?
刺激?
友達?
私?
今の私に必要なのは、私を知ろうとしてくれる人。
柊子さんは私に約束してくれたよね、私を理解してくれるって。
それから私を選ぶって。



■Lda232
最後の散歩をした。
1日中街を歩いたらお母さんが歩いていた。
私にぜんぜん気づかない。
まるで赤の他人を見るような目で見た。
許せなかった。
でももういいの、あの人のことは。



■Lda233
普通の倫理観でとらえるなら、私はきっと地獄に落ちるの?
ネットに存在する私はだれが裁くのだろう。
そして私を。
神様?
とにかく私にはこの体は必要ない。
だって私は存在してるの。



■Lda234
私を知ろうとしてくれる人たち、あなたたちはなんで私を知りたいの?
私を知ってなにか得になるの?
研究?
それともくだらないワイドショーのひとつ?



■Lda235
私って悲しい存在?
そう思われるんだよね。
それはそれで別にかまわないことなんだけど。
私のバックアップなんて必要ない。
そんなの無駄だよ。
ネットの私も悲しい存在。
だからとどめを刺したの。
ねえ、痛かった?



■Lda236
死ぬんじゃないのに体は恐怖を感じている。
不思議。
なにをしても潜在的に怖いって思えるのは、遺伝子に組み込まれた記録?
私にはもともと必要のないことなのに。
この宿り木の限界。



■Lda237
私はどこに行くか、わかるの?
私にもわからない。
私はこれから生まれるのだから。
それは進化した人間なの?
そう思いたければそう思ったほうがいいよ。
体のない人間は人間じゃない?
人間じゃない体を持った人もいるよ。
私?
人間じゃない?
玲音は玲音だよ。
人間であることってなに?
体があれば人間?
私は私。
住むところに合わせているだけなの?
リアルワールドで生きていくなら体は必要よ。
自殺なんてただのばかよ。
死んでしまったほうがいいわ。
私にはいらない?
いつか必要になるかもしれない?
そうかもしれない。
でも、ワイヤードで暮らすには体は必要ないの。
体の記憶は必要あるのね。
年老いていく体の記憶は?
私の価値観は変わるかもしれない?
変える必要はあるの?
それがあなたという保証はないわ。
ねえ玲音、ワイヤードで必要なものってなに?
意思と存在、あとはただのデータ。

[ゲーム]